ならなくていいので一行詩だと思ってください。いくつか、自分の心にひさしい以前から住んでいたイメージが浮上
してきた。年齢的に世界との別れがだんだん近づいて(それは避け
がたいことだから)その前にそうしたイメージに火を灯しておけば
意味がなくはないだろうと思うようになった。
なぐさめを得る人も少しはいるだろう。おもしろいと思えば、つか
のま気持ちが明るくなるだろう。
もって「狂狗」と呼び、四十四狗にて一巻をなす。
これを六巻。英語題名には riprap を充てた。護岸工事などのため
に投げ込まれる捨石のことです。ぼくのイメージにあるのはモンタ
ナ州あたりの標高の高い湖の岸辺に投入され、水面下につづく法面
をなしているような石たち。自然物のかけらをもって人工/自然の
境界を画す。
その石をたどりながら、水面下の世界へどうぞ。奇妙な緑の光がみ
たす楽園にしばし遊び、思い出を持ち帰っていただければさいわい
です。
(「あとがき」より)
著者:管啓次郎
装幀:五十嵐哲夫
文庫版/96ページ
左右社 2019年刊行